●久渡寺/青森県弘前市坂元山元1

家庭を守る神のオシラ様は桑の木で作った男女一対もしくは馬と娘1対の木像が御神体で、岩手県遠野で拝見させてもらったオシラサマの様に御神体の頭部だけを露出し、新たな布をその上に重ねて着せていく形態ではなく、頭部から布にすっぽりと包まれているタイプ。
遠野のように着せ重ねるのではなく、新たな布に着替えをするそうで、金蘭の布の下には、絹の白布が2、3枚着せられ、白布には朱印が押されていた。
オシラサマを持っている家や集落では、関係者が集まりオセンダク(着替え)やイタコよる託宣、オシラ遊ばせが行われる。
願いを叶えたり、禍いを代わりに背負ってくれたオシラサマを久渡寺の大祭5月16日に持参し、本堂でオシラサマに着せる白布に印を押してもらい、壇に並べて、祈祷の護摩焚き、大幣で参詣者共にお祓いしする。

お祓いが終わったオシラサマは位が上がり、新たな飾りを久渡寺から授かる。
最高位のメダルには蚕蛾が真ん中に刻印されていた。
江戸時代のオシラサマ信仰は、託宣をするイタコ(巫女)と祈祷する修験者の2者が柱になって支えられてきたが、明治時代になると修験道廃止により修験者が一掃されてしまい、祈祷する役割を久渡寺が担う事になる。
久渡寺は江戸時代中期頃より寺領に桑園があり、周辺では養蚕が盛んで、オシラサマの関わりが深かった。
昔からのオシラサマを家系で継承する場合と夢や神託により、イタコにオシラサマを祀るように宣旨され、新に祀られたオシラサマや娘が嫁ぐ時にオシラサマを分けて持たせ新たに作ったり、かなりの広がりを展開させていて、昭和の終わり頃には1万5千軒もあった。今現在でも約3千軒のオシラサマが信仰の対象として民家や集落で祀られている。
オシラサマの御神体は基本桑の木で顔を彫ったり、描いたりしたものが多いそうですが、なかには浄瑠璃で使われているような人形が御神体になっている場合もあり、各々違いがあるそうで、久渡寺住職さんもオセンダクの時にみせていただくしか機会がないと言っておられました。

特別に拝見させてもらった御神体には、18世紀の年号が書き込まれています。
各家で作られた御神体は、頭頂部に真綿(蚕綿)を被せて、印の入った白布と金蘭の布を被せ、首に鈴を付け着飾って祀られる。
久渡寺に納められたオシラサマには手に笏や檜扇を持ち、胸に瓔珞、頭には冠を付けて豪華に装飾されて、人々の信仰の厚さを感じさせます。
久渡寺のおしら様講5月16日(以前は旧暦の4月)には沢山のオシラサマが集まり、お参り方が参加されるそうですが、おしら様講の関係者以外の一般見学者等は参加出来ないという事です。
今回は特別に許可を頂き、堂内やオシラサマを撮影させてもらいました。
(中森)







