●国蚕地蔵/福島県喜多方市上三宮町吉川北中167-1
Googleマップで見つけた「国蚕地蔵」。「こくさんじぞう」と読むのでしょうか(最後までわからず)。
蔵の町で有名な喜多方市中心部からは濁川を挟んだ北西山沿いの岩沢というところです。もとは岩沢村、明治8年の合併で吉川村に、明治22年の合併で上三宮村に、昭和29年の合併で喜多方市になったようです。
Googleマップをたよりに、とりあえずお地蔵さん探しに行ってみます。(大澤/2025年9月)

南北に走る県道の西側に小さい集落があり、東側は一面の田んぼ。その向こうに喜多方の街。西側緩斜面にある集落を抜けて1本山沿いの道路から山に向かう未舗装路に入った右手に、帽子とエプロンをしてもらった小さなお地蔵さんの座像が祀ってありました。
この「国蚕地蔵」、ネットで検索してもなんの情報もありませんが、1件だけあるクチコミは、手前にあった古民家旅館「志ぐれ亭」の方によるもののようです。ここも以前は養蚕をしていた建物を利用したと集落の方に聞きました。クチコミによると、築100年の古民家を移築したようです。
未舗装路の先を山に向かってしばらく行くとまとまったお墓があるので、近くにお寺があるのかしらんとお地蔵さんまで戻ってから車道を南下して歩いて行ったら、民家がなくなってから高麗橋跡があって、由緒ありげな岩沢熊野神社があって、さらに歩いて無住の長泉寺があるあたりからはもう隣の集落になってしまいました。

山側から集落方面。赤い屋根の家が、にゃんこがたくさんいた家だったかな。くだった先が県道。遠くは磐梯山方面。

旧岩沢村のあたり。右側ずっと田んぼ田んぼ田んぼ。集落を下っていく道。

高麗橋跡という立派な石碑。昔は赤い橋があったのかな。渡来人と関係あり?

長泉寺と手前の道沿いにあった消火栓。ホースボックスが消火栓より高いところにあるのが不思議。取り出しやすくはあるか。

長泉寺のお地蔵さん。お顔は、あとから別に?石というより、粘土で大きな丸を作ってそこに目と鼻と口と耳をとって付けたように見えて、もうそうにしか見えなくなってしまいました。右のは土台が六地蔵(の一部)
引き返す前にお庭にいらしたおばあちゃんにお声がけしたら、国蚕地蔵のことは写真見てもらってもわからないそうでしたが、そこのお寺(長泉寺)にもお地蔵さんが祀ってあると教えてもらいました。先に見てきましたが、そちらも大事にされていることがわかる、やけに可愛いお顔のお地蔵さんでした(新しいのかな)。養蚕は、昔はやっていたけど、みんなやめてアスパラガス畑になったそうです。でもそれももうほとんどやめてしまったのかな。今も少しだけは残っていました。

近くの民家。右側にちらっと移っているおばあちゃんに、桑畑はみんなアスパラガス畑になったと聞きました。

突然白いのが出てきたんでびっくりした。ヤギか羊かと思ったらカモシカ!ぜんぜん逃げない。子カモシカかと思っていたけど、帰宅後にレンジャーさんに写真見てもらったら立派なおとなで、白いのは珍しいとのこと。
もう一度国蚕地蔵の集落に戻る途中、飛び込みでピンポンして聞き込みしたところ、猫ちゃんがたくさんいたお家では、あのお地蔵さんは昔から(今でも)4軒の家が祀っているという情報を得ました。国蚕地蔵に一番近いお家ならその4軒のうちの1軒だろうとまた飛び込んでみたところ、「国蚕」の読み方含め詳しいことはわかりませんでしたが、並びの4軒で祀っていて、ひーおじいさんのころに「いわつち ぬまじりのねごや地蔵から譲ってもらった」とのことでした。

にゃんこは何匹いるでしょう。こちらのお宅で蚕国地蔵は4軒で祀っているとおじさんから玄関先でうかがいました。

集落の途中にあったお堂。観音堂のようです。お堂の隙間からのぞいたら、「岩澤十一面観音ご詠歌」と書いて掲げてありましたが、観音様は隠してあって見えません。会津三十三番札所観音。
ということで、根小屋地蔵とはどこでしょう?
地図を検索すると、猪苗代湖の北にある猪苗代町のはずれに沼尻という字名があり、旧日本硫黄沼尻鉄道(磐梯急行電鉄)沼尻駅跡もあります。隣には猪苗代町蚕養というそのものズバリの字名もあり沼尻駅跡はこっちの方が近いです。このあたりからお地蔵さんを譲ってもらったのか?と思いましたが、もらってくるにしては遠すぎる気がしました。
余談ですが、Googleマップで見ると猪苗代町沼尻の北隣の長坂には蠶養神社/山祇神社があります。
同町養蚕の養蚕神社とは別のようですが、やはり会津若松の蚕養国神社の分社なのかな?
また、ネット情報だと猪苗代町蚕養にある白木城集落は、「明治21年7月の磐梯山噴火により、国道115号線付近から現在地に移転しました。以前の集落跡には、猫石様として祀られている岩があります。養蚕が盛んだった村は、この神に拝礼すれば養蚕で鼠が近づかないと信じられていました。」だそうです。

(ストビューより)赤猫大明神(猫石)。詳しい説明ページが磐梯ジオパークの中にありました。猫石は川の両側にあり、夫婦猫だったんですね。
●根小屋地蔵/福島県喜多方市岩月町 37°43’44.4″N 139°56’46.4″E
閑話休題。
今度は「根小屋地蔵」で地図を検索すると、思いのほかあっさり見つかってしまいました。そこは、耳で聞いて書き取った「いわつち」ではなく「いわつき(岩月)」でした。もとは岩月村。ここも昭和29年の合併で喜多方市岩月町になったようです。うーん、沼尻は関係なかったみたい。
蚕国地蔵から、このお地蔵さんをゆずってもらったという根小屋地蔵までは、Googleマップで徒歩約13キロ(3時間12分)、車だと駐車場まで30分かからないのでその足で向かってみました。
岩月には、米沢会津街道が桧原峠ルートから変わって大峠ルートになってからの旧国道121号が通っていて、昔は賑わったことでしょう。現在国道121号は長い新大峠トンネルなどいくつものトンネルがある新道に切り替わっていて、国道指定を外れた旧道は、民家のある先まで通れますがその先は通行止めとなっています。しばらくは冬季通行止めだったのが、ついに完全に通行止めになってしまったようです。
トイレもある根小屋地蔵駐車場からは整備された山道を50mくらいでしょうか。
裏から到着した根小屋地蔵には、誰もいませんでしたが、今も大切にされていることがよくわかりました。本堂(?)の前側には、お地蔵さんの小さなお堂が2つあり、全部で4体。ここにもう1体あったものを、ひーおじいさんの代にいただいてきたのでしょうか。明治の終わりか大正時代かなあ。この根小屋地蔵さんは子育て地蔵さん、子どもの守り神として信仰を集めているそうなので、オコサマ(お蚕さま)を守ってもらうためにいただいて来たということなのかな。岩月から岩沢までは、リヤカーに乗せて13キロ運んで行ったのかな。なんてことを思いながらお参りしてきました。
(大澤)

国蚕地蔵さんを譲ってもらったという根小屋地蔵尊まで来てみました。旧国道(米沢街道)からちょっと右に入ったところにトイレもある駐車場があり、ここから先は山道。旧岩月村の根小屋観音への参道(ただし裏参道)。50mくらいかな。案外近かった。

こっちが表参道側。真ん中のよだれかけのお地蔵さん写真撮り忘れ。

手水鉢先の右側に小さなお堂2つ。岩沢に運ばれて国蚕地蔵さんになったお地蔵さんは、どこにいらしたのでしょう。右のが国蚕地蔵さんと似てるかも。

こちら本堂(というのか?)扉が開けられ、灯りもついてました。正面が根小屋地蔵尊でしょうね。

こんな記事も大切に飾ってありました。水屋とトイレを寄贈した人の記事。根小屋地蔵尊は正徳3年(1713)建立と伝えられ、子育てに恵まれるほか子どもの守り神として知られ、地元はもとより東京などから参拝客も訪れるほど」とあります。子どもの守り神=オコサマの守り神ということで、ゆずってもらったのてしょうか。

根小屋地蔵尊駐車場からさらに山の方に車道を進むと、小さな集落があり、かつては分校があったようです。道はつきあたりでおしまい。その先に蕎麦畑が広がって白い蕎麦の花がきれいでした。昔はここまで桑畑だったのかな。

旧米沢街道沿いちょっと入ったところに、杉山という小さい集落の入口。

「杉山は戸数19戸の小さな集落で、むかしは、木炭と笠の材料となるスゲ草の産地でした」「蔵座敷の内部は漆で塗り飾られ、当時の座敷としては最高のものでした」とあります。

杉山集落の立派な蔵。でも、一切観光化されてなくて、駐車場もありません(観光用案内図や観光トイレはあるのに)。集落に入ろうとするとけたたましい警戒音がしたんてびびりました。









